街と人をつなぐ吉南祭礼
提灯を掲げ、街の未来に希望を灯す
吉祥寺では毎年9月に、街の氏神である武蔵野八幡宮の例大祭に合わせ「吉祥寺秋まつり」が行われてきました。武蔵野八幡宮の宮神輿や各町会の神輿が練り歩き、あちらこちらに縁日なども開かれ、街が賑やかな空気に染まります。
48回目を迎えようとしていた昨年、突如拡大した新型コロナウイルス感染症の影響で残念ながら祭りは中止になりました。そんな中、吉祥寺南町を拠点に祭礼委員も務める地元有志の集まり「吉南」の若手メンバーが、「こんな時だからこそ街を明るく盛り上げたい」と声を上げ、末広通りの一角に提灯を掲出しました。今年も引き続き町内には「コロナに負けるな」のメッセージを記した提灯が掲げられ、街を明るく照らしています。提灯掲出と街へ寄せる想いを、吉南祭礼委員会の実行委員長で、「吉南」会長を務める栗原 淳さんに伺いました。
吉南祭礼2021 末広通り側の提灯掲出風景
−昨年お祭りが中止になる中、どのような経緯で提灯を掲出しようと考えられたのでしょうか?
コロナ禍でやりたいことも制限されていましたし、なかなか集まれる機会もなくてはがゆい思いをしていました。街にとって大きなイベントであったお祭りは今年も開催ができず厳しい状況が続いていましたが、だからこそ何か自分たちにできる精一杯のことをと考え、提灯の掲出を計画しました。
これまでお祭りがある時もご奉納いただいた方の提灯を掲げ、現在提灯を掲出している向かいの駐車場スペースをお借りして縁日をやったり、神酒所を設営したり活動していたのですが、そうしたいつもご協力いただいている方、ご支援いただいている方から「お祭りはできなかったけれど、こういう形で提灯が掲げられて、少しだけ祭り気分になれて良かった」と直接声をかけていただき、うれしく思いました。
2019年の祭り風景
−特に若手の方々が中心となって発案し、実現したと伺いました。
「吉南」には南町を中心にしたエリアで働いている人、店を手掛けている人、住んでいる人などが参加していて、年配の方から20代くらいまで現在70人ほどいます。
僕は吉祥寺に来て23年経ちますが、この街に来てからはずっと「吉南」そして「吉祥寺秋まつり」に参加しています。現在は会長職を担っていて、役員も40代が集まっているのですが、ちょうど昨年辺りから自分含め50代前半から40代の若手が自分たちで考え、行動していくような形も出来てきたので、そういう意味では街の先輩方がこれまで築かれてきたものを徐々に引き継ぎ、良い形で世代交代が進んでいると思っています。
吉南祭礼委員会の若手メンバー
−地域の連携、街との関わりという点でお祭りの存在は大きいのでしょうか?
そうですね、そこが参加する一番大きな意義だと感じます。吉祥寺の中でも南町という地域の活性化を皆で協力して目指す、その活動の一環として祭りをとても大事にしています。
やはりお祭りの時が一年で最も町会の人たちとコミュニケーションをとる機会になるので、そこでいろいろ街の情報を交換することができます。特に同世代だとプライベートでも繋がり合えますし、そこから連携を取り広がっていっていると思います。
−栗原さんは、吉祥寺はどんな街だと感じられていますか?
南町に関していうと、個人でがんばっているお店が多いと思うんですよね。吉祥寺の駅前とは違ってそれほど人通りが多いわけではありませんが、個性的な商店が並んでいます。そして暮らしやすいのはもちろん、仲間ができやすい街のように感じています。特に祭りがあることで吉祥寺の人たちと多く繋がれますし、例え町会が違っても同世代で参加しているというきっかけで仲良くなったり、飲み屋で偶然会っても自然と仲良くなったりします。
吉南祭礼2021 末広通り側から見た提灯
−街への今後の想いをお聞かせください。
毎年祭りが開かれる時には地元の人たちはもちろん、飲食店など商店が並ぶ通りなので、そうしたお店のお客さんたちも遊びに来て盛り上がりを見せます。祭りのある日曜日には吉祥寺駅北口の平和通り(PARCO前)に各町内会の神輿が大集合するセレモニーがあり、どのパフォーマンスも迫力があってたくさんの人が楽しみにしています。
世の中の状況が一気に好転するのは難しいと思いますが、いろいろなことが少しずつ緩和され、活気のある地域に戻していくための協力を今後も続けていけたらと思っています。
小さい時から親世代の活動を見てきた子世代や孫世代が加わり、さらにその友達が楽しそうだと感じて新たに加わるなど、20代、30代など自分たちよりさらに若手の世代が自然に参加する流れができています。今はお祭りがないので新しい会員があまり増えないのですが、何か活動しているということを伝えることで、少しずつ若い人たちも集まってくれるのではないかと期待しています。お祭りがなければ同世代以外、年配の人や若い人たちと仲良くする機会もなかなかなかったと思うので、これからより若い世代へと引き継ぎながら会員を増やし、この祭りを長く続けていくとともに、街と連携し地域を盛り上げていけたらと思います。
(取材日 2021年9月3日)
PLOFILE:
吉南祭礼委員会 実行委員長
地域住民等による有志団体「吉南」 会長
栗原 淳 さん